1. ダートと芝は異なるコース
競馬は同じ距離でも、走る「地面」が変わると別競技のように難易度が変わります。まずはダートと芝の素材・踏み心地・水はけなど、根本の違いを整理しましょう。
1-1. 芝コースとはどんなコース?
芝コースは、その名の通り「芝(草)」の上を走ります。ですが、単に草が生えているだけではありません。下には土の層があり、さらに整備によってクッション性(踏んだときの反発)が作られています。
芝のイメージを一言で言うなら、**“弾む路面”**です。
踏み込んだ力が、ある程度そのまま前に返ってきます。これが芝でスピードが出やすい大きな理由です。
初心者の方は、まずこう覚えると分かりやすいです。
- 芝:踏む → 反発が返る → 加速しやすい
- 見栄え:綺麗で走りやすそうに見える(実際に走りやすいことが多い)
もちろん芝にも個性があり、開催が進んで傷んでくると「掘れる」「荒れる」など走りづらさが増します。ですが基本は“反発がある”と押さえておけば十分です。
1-2. ダートコースとはどんなコース?
ダートは「砂」のコースです。芝のように反発で押し返してくれるというより、踏み込むと沈む性質が強くなります。
ダートのイメージは、“沈む路面”とでも言いましょうか。砂浜を走ると脚が取られて疲れる感じ、あれに近いです(もちろん競馬のダートは整備されているので、砂浜そのままではありません)。
沈む路面だと何が起きるか。ポイントは2つです。
- 加速しにくい
踏んだ力が地面に吸収されやすく、前へ進む効率が落ちます。 - バテやすい(負荷が高い)
同じスピードでも筋力を使い、スタミナ(長く力を出す能力)も消耗します。
だからダートでは、芝ほど「瞬間的なキレ」だけで勝つのが難しく、パワーや持続力、位置取りが重要になりやすいのです。
1-3. 摩擦・クッション・水分量
芝とダートを分けるのは「草か砂か」だけではありません。走りの質を決めるポイントは、主に次の3つです。
- 摩擦(滑りにくさ):地面を蹴ったときに、どれだけ“掴めるか”
- クッション(反発):踏み込んだ力が、どれだけ前に返ってくるか
- 水分量(湿り気):締まるのか、ぐちゃぐちゃになるのか
ここで大事なのは、水分量が変わると、同じコースでも別物になることです。特にダートは雨で性格が変わりやすいので、後の章で丁寧に扱います。
2. 推進力と走り方
芝とダートの差は「スピードが出る/出ない」だけではありません。脚の使い方、加速の質までが異なります。仕組みで理解すると予想がラクになります。
2-1. 芝はストライドと瞬発力(加速力)
芝でよく聞く言葉に「瞬発力(しゅんぱつりょく)」があります。難しそうですが、意味はシンプルです。
- 瞬発力=短い時間でグッと加速できる力
(いわゆる“キレ”の正体です)

芝には反発力があるので、馬が一気にギアを上げやすい。だから最後の直線で「外に持ち出して、ズドンと伸びる」のような勝ち方が成立しやすいです。
また芝は、脚を大きく伸ばす走り(ストライドが大きい走り)が活きやすい傾向があります。反発力があるぶん、伸び伸び走れるからです。
ただし、芝でも馬場が荒れると反発力が弱くなり、瞬発力だけでは足りなくなります。ここは「芝=キレ」という固定観念に囚われないのがポイントです。
2-2. ダートはパワーと持続力
その反面、ダートは反発力が弱く、沈みやすい。つまり馬は、地面を
- 掴む(空転しない)
- 押す(沈む分を押し返す)
この2つを繰り返して前に進みます。ここで必要なのが、ざっくり言えば
- パワー=押し返す筋力
- 持続力=長く同じ力を出す能力
です。

芝のように「最後だけ一瞬速くなる」より、ダートは「ある程度速いスピードを長く保つ」形になりやすい。だからダート巧者は、直線だけでなく道中の走りがしぶといです。
初心者向けに言い換えるなら、こうです。
- 芝:最後に“ギアチェンジ”しやすい
- ダート:最後に“ギアチェンジ”しにくい分、いい位置で走るのが大事
2-3. 砂をかぶると何が起きる?
ダート特有の現象が「砂をかぶる」です。前の馬が蹴った砂が、後ろの馬に飛んで当たります。いわゆる「キックバック」ですね。
砂をかぶると、馬によっては次のような悪影響が出ます。
- 顔に砂が当たって嫌がる(頭を上げる、外に逃げる)
- 目や鼻が気になって集中が切れる
- ブレーキがかかり、位置取りが下がる
この「砂をかぶってダメになるタイプ」は、砂をかぶってしまうと能力が発揮しにくくなるため、内枠になった場合は要注意です。
逆に、砂をかぶっても平気な馬は、揉まれる競馬(馬群の中で走る)でも力を出しやすい。ダートの安定感はここで差がつきます。
3. なぜダートは前が残りやすいのか
初心者がつまずきやすいのが「展開」です。ダートは位置取り、芝は切れ味、というイメージがありますが、背景には“加速しづらさ”と“減速しづらさ”があります。
3-1. ダートレースの基本構造
ダートで前が残りやすい理由は、精神論ではありません。構造です。
- ダートは加速しにくい
→ 後ろの馬が「一気に加速して差す」のが難しい - つまり先に前へ行っている馬が有利になりやすい
さらに、ダートは負荷が高いので、後ろから追い上げる馬は
「追い上げるための脚」+「最後まで粘る脚」
の両方が必要です。要求水準が高くなる分、届かないケースが増えます。

よってダートでは、能力が同じくらいなら
- 先行(前の方)>差し(中団)>追込(後方)
になりやすい、というわけです。
3-2. 芝レースの基本構造
芝は反発力がある分、直線で一気に加速できます。そのため、馬群が「一列棒状の隊列」になっても、最後の直線で外から差す展開が成立しやすいです。
ただしこれも万能ではありません。芝でも
- ペースが遅すぎる(前方の馬が楽)
- 内が伸びる馬場で前が止まりにくい
などが重なると、芝でも前残りになります。重要なのは「芝だから差し」ではなく、芝が加速しやすい状態かどうかで考えることです。
3-3. ダートでも差しが決まる条件
しかしながら、ダートでも差しが決着するレースは当然あります。条件は主に次の通りです。
- 前が飛ばしすぎて総崩れ(ハイペースで先行勢が消耗)
- 深いダートで前が消耗(砂が重く、先行勢が止まりやすい)
- 直線が長い・コーナーが緩いコース(追い上げが間に合う)
- 砂をかぶらない形で外を回せた差し馬(ストレスなく伸びる)
つまり、ダートの差しは「能力だけ」ではなく、条件が揃うと届くことが多いです。ここが、芝とダートの予想の根本を分ける最大ポイントです。
4. 馬場状態の意味
馬場状態の発表が同じでも、芝とダートでは有利不利が逆に出ることがあります。水分が増えると何が変わるのかを、芝・ダート別に整理して覚えましょう。
4-1. 芝レースの道悪
降雨などで芝の状態が重くなると、まず起きやすいのは・・・
- 踏んだ場所が削れて「掘れた状態」
- 表面が滑って「踏ん張りが効かない」
この結果、瞬発力(短い時間での加速)が決まりにくくなります。要するに「最後の速い脚」が出しづらい。
このような芝の状態で浮上しやすいのが・・・
- パワー型
- 長く脚を使える持続型
- 道悪でもフォームが崩れない馬
です。また、能力以外にも気性的に「雨が嫌い」というデリケートな馬も割り引いたほうが良いでしょう。芝の道悪は、能力比較が“別の物差し”になるというこです。
4-2. ダートレースの道悪
ここが初心者にとって一番意外なところだと思います。ダートは降雨などで馬場が重くなると、砂が適度に湿って「締まる」ことがあります。
では、ダートが締まるとどういったことが起こるのか。
- 脚が沈みにくい
- 空転しにくい
- 前へ進む効率が上がる
→ タイムが速くなりやすい(いわゆる“時計が出る”)
つまりダートは、雨で「スピードが出やすくなる」ケースが多くなります。ただし、ここで一つ注意点があります。雨なら必ず速くなるというわけではない、ということです。
4-3. 馬場状態が「不良」の場合
雨量が多すぎたり、排水が追いつかなかったりすると、ダートは・・・
- 表面がぐちゃぐちゃ
- 水たまりができる
- 砂が深くなりすぎて脚が取られる
など、逆にスピードが出にくくなります。この場合は「締まる」ではなく「重くなる」といった感じでしょうか。
初心者の方向けに整理すると、こう覚えると事故が減ります。参考にしてください。
| 馬場状態 | 芝の傾向 | ダートの傾向 |
|---|---|---|
| 良 | 反発力が出やすい | 砂の深さ次第で標準 |
| 稍重〜重 | 切れ味が落ちやすい | 締まって走りやすくなることが多い |
| 不良(極端) | かなり特殊、適性差大 | 走りやすい場合と走りにくい場合の差が大きい |
上の表は、大雑把な分類だと思ってください。必ずこうなるというわけではありません。「ダートの道悪=速い」という解釈は概ね正しいと思いますが、極端な不良馬場は別。この一言を頭に残しておくと、予想が安定するのではないでしょうか。

5. 血統・体型・気性による適性
適性は「芝血統」「ダート血統」だけで決まりません。体の作り、走りのフォーム、気性(テンションの上がりやすさ)まで含めて考えると納得感が増します。
5-1. 筋肉量・胴の長さ・脚元の強さ
ダートは負荷が高いので、体型(見た目)にヒントが出やすいです。もちろん例外はありますが、初心者の方が”わかりやすい観察ポイント”は次の通りです。
- 筋肉量が豊富(特にトモ=後ろ脚まわり)
→ 砂を押す力につながりやすい - 胴が詰まって見える(短め)タイプ
→ 瞬間のスピードより、力強く進む走りになりやすい - 脚元がしっかりしている印象
→ ダートの負荷に耐えやすい傾向
逆に芝は、しなやかさや伸びやかさが目立つ馬が走りやすい傾向があります。ただし、ここは「体型だけで断定しない」ことが大切です。体型はあくまで補助線です。
5-2. 気性のヒント
ダートでは気性(性格)も適性になります。理由は単純で、ダートは・・・
- 砂をかぶりやすい
- 馬群が密になりやすい(位置取りが重要だから)
この2点でストレスが増えやすいからです。
たとえば・・・
- 外枠の時だけ走る(内枠になると×)
- 前に壁ができると嫌がる
- 砂をかぶった途端に手応えが悪くなる
こういう馬は、能力が高くても成績にムラが出るものです。逆に「揉まれても平気」な馬はダートで安定した成績を出しやすいです。
5-3. 血統は“傾向”として使う
血統の話は奥が深いのですが、初心者の方にはスタンスだけで十分だと思います。
- 血統は「断定の材料」ではなく「傾向を掴むための材料」
- 芝もダートも走れる“万能型”も存在する
- 迷ったときの後押しに使う
血統も重要なファクターですが、
「走り方(加速の質、砂かぶりの反応)」
を観察するのも重要な要因になると感じます。
6. 距離・コース形態の影響
ダートは「短距離=テンの速さ」「中距離=持久力+立ち回り」になりやすく、芝以上に色が分かれます。コースの形(直線の長さ、コーナーのきつさ)も重要です。
6-1. ダート短距離
ダート短距離は、前半の位置取りが重要といえるでしょう。理由は簡単で、短距離はスピード勝負!後ろからでは物理的に届きにくい。さらにダートは加速が重いので、後方一気が決まりづらい。
だから短距離では・・・
- スタートが速い(出脚がいい)
- 二の脚が速い(加速が続く)
- 砂をかぶらない位置を取れる
このあたりが重要になりやすいです。
6-2. ダート中距離
中距離になると、短距離ほどスタート一発では決まりません。代わりに重要になるのが・・・
- 道中で力みすぎない(息が入る)
- コーナーでロスなく回れる
- 早めに動いても止まらない持続力
です。ダート中距離で強い馬は、直線の一瞬だけではなく、長く脚を使う形で押し切ることが多いです。
6-3. 直線の長短で何が変わる?
コース形態は、芝以上にダートで効くことがあります。覚え方はシンプルです。
- 直線が短いほど:前が有利になりやすい
- 直線が長いほど:差しが届く余地が増える
ただし、直線が長くてもダートは「加速が重い」ので、差しが決まるには前が止まる理由(速いペース、深い砂、外差しが利く馬場など)が必要になりやすいです。
7. 実戦チェックリスト
最後に、知識を“使える形”にしましょう。難しい数値より、成績表やレース映像から拾えるポイントを優先し、ダート予想の型を作りましょう。
7-1. 脚質・上がり・通過順の読み方
専門用語っぽいですが、噛み砕くと簡単です。
- 脚質(きゃくしつ):どの位置で走る馬か(逃げ 先行 差し 追込)
- 通過順:道中の位置取りの履歴
- 上がり:最後の一定区間の速さ(日本だと主に最後の3ハロン)
ダート予想で初心者の方がまず効くのは、この3つです。見方はこうです。
- ダートで安定している馬は「通過順が安定」していることが多い
- 後ろからの馬は、展開がハマらないと届かないことが多い
- 上がり最速でも届かないレースがある(これがダートの難しさ)
成績表は、難しく読もうとしなくて大丈夫です。「いつも前方にいるのか」「砂をかぶる位置でも走れているのか」。ここを見るだけでも、大きな武器になることでしょう。
7-2. レース映像を見てみよう
レース映像は、JRAのサイト(新しいタブが開きます)で無料で視聴できます。レースを映像でチェックするなら、ポイントは2つだけで十分です。
- 砂をかぶった瞬間の反応
嫌がって頭を上げる、外に逃げる、手ごたえが一気に悪くなる→ こういう馬は展開や枠順依存が強いです。 - コーナーでの手応え
ダートの強い馬は、コーナーから押して上がっていっても止まりにくいです。逆にコーナーで手応えが悪くなる馬は、直線まで持ちません。
“最後の直線だけ”ではなく、コーナーの走りも見る。これがダートレース上達の近道です。
7-3. 道悪適性と先行力を優先する
初心者の方が迷ったときの優先順位を作っておきます。ダート中心なら、まずはこの順で考えるとブレにくいと思います。
- 先行できるか(位置を取れるか)
- 砂をかぶっても走れるか(揉まれて平気か)
- 馬場が湿っているなら道悪で走った経験があるか
- 距離が合うか(短距離型か中距離型か)
血統や細かい指数などは、その後で十分です。まずは「ダートの構造に合うか」を上から順に点検していくと、予想を組み立てやすくなります。
8. まとめ(初心者の方向け)
芝とダートは「地面の反発が違う」から、走り方も展開も変わります。最後に要点だけを短く整理し、次のレースで迷わない形にまとめます。
- 芝は“弾む”:反発があるので加速しやすく、瞬発力(キレ)が活きやすい
- ダートは“沈む”:反発が弱く、パワーと持続力、そして位置取りが重要になりやすい
- ダートは前が残りやすい:後ろから一気に加速しづらい構造が背景
- 道悪の意味が違う:芝は走りにくくなりやすい/ダートは締まって速くなることもある(極端な不良は別)
- 砂をかぶる適性が大事:嫌がる馬は能力があっても負けやすい
- 予想は“構造”から:先行力・砂かぶり・道悪適性を上からチェックすると迷いにくい
この6つを押さえるだけで、「芝レースの感覚のままダートレースを予想して外す」ケースがぐっと減ることでしょう。次にダートレースを見るときは、ぜひ意識してみてください。
